中野整形外科クリニック

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マッケンジー先生自叙伝:Against the tide 29

診断、なんていうと日本では医師以外が診断を下してはいけないということになっているので、理学療法士が診断だなんて問題だっ、ということになってしまいますが、実際、マッケンジー法で症状を分類することは、診断の方法としても有用です。

腰痛の85%は原因不明だという話があるくらいですから、画像検査でみられる変化が本当に症状の原因になっているかなんて、分からないことの方が多いのですよね。

じゃあ、原因解明に近づくことは不可能なのか?

自分がどういう人間なのかを突き止めるには、ひたすら分析的に自己を見つめ続けるのではなく、怒り、喜び、悲しみなど、物事に対する自分の感情の動き(としての反応)を分類、整理することだ、と唯幻論の岸田秀が「ものぐさ精神分析」で発言されています。

腰痛というわけのわからないものの実態を捕えようとするなら、ある刺激にたいして、それがどう反応するものなのか、という情報を集めて分類していくと見えてくるものがあるのじゃあないのか?

マッケンジー師匠が考えられたのはそういうことなんではないかと、不肖の弟子のひとりとしては思うのです。(マッケンジー協会の公式見解ではありません←こればっかり)

今日も、考察をつづける、マッケンジー先生、、、、

 

ひとつのことから、つぎつぎに理論が広がってきましたわ。

今まで経験してきたことや、何百人という患者さんのデ-タをみていると、患者さんへの教育的な介入がしっかり出来ていないと、避けがたく次々と起こってくるのが腰痛ってやつやないんかと思います。

その最初の段階では、腰を丸めてダランと座り続けていることで、患者さんはちょっとした痛みを腰に感じてきはる。

その時点ではまだなんのダメ-ジもない。

痛みは動き出したそのときから段々とでてくるのや。

そんなに長う続くもんでもないさかい、あんまりみんな気にしはれへんのです。

そういうのんが、椎間板周囲の正常な靱帯構造が、悪い姿勢の影響で引き延ばされて起こってくる痛みですわ。

次の段階では、長時間座っとるか腰を丸め続けていて椎間板に強い力がかかったときに、それがひどなると靱帯の断裂なんかもおこってきよる。

そうしていつものように動かしにくうなる代わりに、痛みが残るようになって、断裂が起こった場所での椎間板のズレなんかがひどなってきたりする。

時に痛みは治まることもあり、治癒も進んだりしよる。

最終段階では断裂してダメ-ジを受けた場所が修復を繰り返してきたことで、ちぢこまった瘢痕組織が通常の動きを邪魔して持続する痛みを出すようになってまうんやないですかなぁ。

そんなふうに患者さんの症状を分類していって、なおかつ分類自体が適切な治療方針を示している、いうようなモンはいままでになかったですやろ?

椎間板の位置やらがズレとるような(derangement syndrome)患者さんでは、プロセスを逆にたどっていくように特定のエクセサイズと教育を進めていくと治療できる。

すでに椎間板損傷が起こってしもて、瘢痕組織が出来あがってしもうとる場合(Dysfunction syndrome)は、さらに損傷を起こさんように気イつけながら瘢痕組織を伸ばすように、作り替えていくようにエクセサイズする事を教える。

Postural syndromeでは,座位姿勢を良うするようにということ以外、何も言う事あらへん。

このことがはっきりしてきてから、私は患者さんを診たら片っ端から分類しまくるようになりましたんやが、この結論が背骨がらみの問題に自分で対処できたり、診断にもつながるなんてことには全く気ィついてませんでしたわ。

適切に行うことが出来たとしたら、反復運動いうやつは痛みの場所やら痛みの強さやらに影響を及ぼして、治療に使えますのや。

ちゅうことは、反復運動は診断にも有用や、いうことですわなぁ。

こんな事を日々考えとったら、長いこと腰痛で悩んでる、いう患者さんが来はりました。

せっかく来はったのに、その日に限って全く痛みがない、言わはりますねんで。

患者さんに、痛みがない、なんて言われてしもたら、私らはホンマになんもやることあらへんですやんか。

どんな動きで痛みが出て、どう動いたら痛みのうて楽に動けるんやなあ、いうて調べることも出来ィしませんやないですか。

私は、分類にあてはめるとすると、どこに入るんやろう、と思て患者さんに質問しはじめました。

もし庭いじりなんかで腰を曲げつづけとるとどうなる?なんて。

患者さんの答えはYes!やったんで、5、6回腰を前に曲げてもらいました。

その動作の後、なんとなく腰がおかしい、言うてはりましたんで、腰の痛み自体をひどくさせることが出来るんかどうか試してみたろ、思いましてん。

爪先に手が届くくらい、10回、12回、いや、もっとや、何回も何回も腰を前に曲げさせてみたんですわ。

そしたら、なんかだんだん痛みが出てきたみたいや、いうて言いだしはるワケですさかい、私も興奮してきましたわ。

症状が無かった患者さんに反復屈曲運動を続けさせると、痛みを誘発させることができましたんや。

診断することにも有用なテクニックや、とも思えますわな。

あまつさえ、状況を全く逆に出来るとしたら、伸展させる方向への反復運動が治療に使える、いうことにつながってくるんやないですか。

私はホンマに身震いするくらいドキドキやったんですけど、実際、伸展方向のエクセサイズをしてもらうことで症状がすっかり良うなったんで、なんやホッとしたような心持ちでしたわ。