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伊藤先生のMDT/マッケンジー法臨床実習体験記、一問一答②
Q:実習を受けると、 Diploma の先⽣たちが考えていることがわかるようになる?
私⾃⾝、認定講習会の受講中や聴講の際に、
「なぜ Diploma の先⽣たちは、あの場でサクサクと⽅針を⽴てることができるのだろう?」と不思議に思っておりました。
今でも聴講に伺うと新鮮な学びがありますので、
Diploma program を履修することがゴールではないのだと感じます。
とはいえ、differentiation(鑑別)のアルゴリズムは⾒えてくるようになりましたので、
「治療の設計図」を描く練習を重ねることで、精度を上げることが出来そうだと期待が持てるようになりました。
どのような流れで differentiation(鑑別)を進めるかを学ぶ⼿段として、Dundee では模擬患者を想定した“ケースシナリオ”を⽤いました。
コースマニュアルにも症例がいくつか掲載されていますが、それをさらに細分化し、
多様な症例パターンに対する反復運動の⽅向の選択や、
Force Progression と Force Alternative 選択のアルゴリズムをシミュレーションしながら練習します。
そして、⾃分がなぜそのエクササイズを選択したのか、リーズニングをします。
<中の注>MDT/マッケンジー法では、反復運動や持続的な負荷を加えて状態が変化するのを検証しつづけていくのですが、
変化が明らかではない場合にForce Progression(負荷を強める)、Force alternative(負荷をかける状況を変える)を通して、
さらに病態から生じる反応を詳しく分析し、調べます。
“ケースシナリオ”による練習は、将棋の次の⼀⼿を練習する感覚に似ていると思います。
アルゴリズムのパターンをシミュレーションしておくことで、
実際の治療で想定外の反応に遭遇した際に、咄嗟に“次の⼀⼿”を打ち出し易くなります。
「治療の設計図」を、反応にしたがって更新してゆく作業には、
ケースシナリオによるシミュレーションが役に⽴つと思います。
⾃分が担当した患者様の「治療の設計図」を描く練習。
初回の問診から運動検査の選択、その後反応によって ⾃分が何を想定したかリーズニングを⾏いました。
いろいろなパターンの症状を想定して、アルゴリズム をシミュレーションする練習。
脊椎か四肢か?というざっくりとした例を、さらに発症機転、関節運動検査の結果や TLG の判定など、
複数のパターンを想定しながら介⼊を考えました。
<中の注>TLGとは、trafific light Guide。
直訳すると交通信号機ガイド。
運動(負荷)検査による反応の結果を赤/黄/青(緑)で判断し、
青(緑)と判断するなら、そのまま進めましょう。
赤ならそれ以上先には進めない。
黄色なら注意して進みましょう。
(これ、日本の現行の交通法規とは異なります。
関西ルールではOK!と、ちまたではいわれる方もおられるかもしれませんが、
それもさすがに警視庁交通課の皆々様には通りますまい。)
これ、すべて、運動検査を進めるにあたっての指標となります。
脊椎か四肢か?という話について補足、ですが、
マッケンジー法:MDTでは、例えば四肢の疾患である膝の症状を診ていくのに、最初は腰からの影響を調べます。
腰の対処だけで、膝にどのような変化が出るのかを調べるのです。
肩、肘であれば頸、胸(頸椎、胸椎)から、というように、脊柱からの評価をまず行い、
次に四肢の評価へという流れがあります。
膝の症状で来てるのに、なんか腰の運動ばっかりやらされるのよね、
というようなことがMDT/マッケンジー法の臨床の場では、フツーにあります。
第二回は、ここまで。
さらにつづきます。
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書いた人:伊藤博子先生
編集した人:尼崎市のはずれ、川ひとつ越えるとそこは大阪市西淀川区、の中野整形外科運動器リハビリテーションクリニック 院長 中の