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マッケンジー先生自叙伝:Against the tide 32
マッケンジー法は魔法でもなんでもなく、ただセラピストが患者さんの体に働きかけたことから起こる反応を見つめて、それが良い反応なのか悪い反応なのかを判断し、良い反応ならば、それをつづけてもらう、というだけのシンプルな方法です。
評価方法に基本となるルールはありますが、こうしなければならないというような決まったやり方はありません。
講習を受ければ、スタンダードなやり方は教えてもらえますが、そのやり方でないといけないということはありません。
患者さんと相対したその場の状況に応じて、なにを試せばよいのかをその都度考えるのですが、時に何をしてよいのかまったく見当がつかない状況に陥ることもあります。
そんな時に、患者さんと雑談するなかにヒントを見つけたり、とりあえず何かをしてもらうなかで道が見えてきたりすることも数多く経験します。
手さぐりですすんでいく先に、突如、患者さんの症状や動きが大きく変化することがでてくると、ああ、ワシは今、なんて面白いことをやってるんだろう、との実感と、ロビン・マッケンジー師匠の経験があたかも自分のなかで新しく生まれつつ繰り返されているような、不思議な気分になったりします。師匠も恐らくこんな経験をされたのではなかろうかなあ、、と。
などと、こんなことをつらつら考えているのは私だけかもしれませんがね。
では、今日も師匠、どうぞ、、、。
脊柱が側弯してきてしもてる(背骨がくの字に曲がってきてる)ような坐骨神経痛患者さんでは、下肢に痛みが放散してしまうので片方にしか体を曲げられへんのです。
ものすごうlateralshift(側方偏位)しとる患者さんを初めて目にしたとき、エライ興味をそそられましたんやけど、そのときには上手いことエエ結果は出せずじまいでした。
背が高うて、背中をかがめるような姿勢で左側へ体を傾けるようにしたはるひとでしたなあ。
腰と右の太腿ににエライ痛みがあるいうことでした。
私は、どうしてエエもんか、とんと検討つきませなんだんや。
とりあえず治療台で伸展のpush-upをさせてみたんですが臀部の痛みが出てくるのんがツラ過ぎて、とてもこんなん出来へん、て言わはる。
腹這いのうつむせで寝てはる姿勢のまま、試しに体がまっすぐになるように、上半身をズラすようにさせてみたんですが、これは上手いこといったみたいで、そやけど立ってもろたら、またすぐ元のように体を曲げてしまいはるんですわ。
もっかい寝てもらって、体をまっすぐするようにしてもろた。
でも、立ってもらうとまた元通りに変形してまうんです。
そうこうしとるうちに痛みが強なって、寝てられへんぐらいになってきた、言わはるんで、しゃあないんで立ってもらうことにしました。
立った状態で私が体を押し込むようにして、彼の体がまっすぐになるようにしてみたらどうなるんやろ、とふと思たんです。
そこで、彼の上半身に手をまわしてギュッと締め付けるようにしてみると、圧力かけてる状態やからか体がちょっとずつ動き出して、ほれで急に体を右に傾けはったんです。
すると、いま、痛みが逆側の、左側の腰と左側の太腿に場所が変わったみたいや、言わはりますねん。
彼の症状と体のゆがみは完全に逆側に変わってしもてますねん。
ちゅうても、来院してもろた時より痛みがけっこうひどなってしもて、こらあかん、と、彼を自宅まで送らしてもらうしかないようになってしもたんです。
このケ-スから考えさせられたことは、こういう患者さんの体のゆがみは椎間板のズレから生じてくる可能性があって、今回は特に場所が逆側に変わってまうぐらいズレが変化しやすいような状態やったんやないか、いうことです。
のちにもっと分かり易い説明に思い当たりました。
体の正中でズレが固定された状態になっていて、その上に載っかってる背骨の椎体が片方から逆の一方へと傾きやすくなっとったんでしょうかなぁ、と。