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マッケンジー先生自叙伝:Against the tide 37
欲に目がくらむマッケンジー先生。
師匠、そんな都合のエエこと、おますかいな。
ニュージーランド版、お宝鑑定団ってなところですわなあ。
Lower Huttでの私らの住居は商業地区でしたんやが、まあ、便利な場所でしたわ。
そこの地価がある時からごっつい値上がりしましてん。
もともと、あまり長いこと、そこにおるつもりも無かったんですが、ある日、家を買うて3年目くらいでしたか、ドアをノックしはる人がおった。
そこで断わるのんがもったいないぐらいの、とびきりの条件を提示されましたもんで、あっという間に古い5ベットル-ムの家は葬儀会館に早変わりですわ。
私ら家族はまたしても引っ越しすることとなり、今度は木々豊かなシルバ-ストリ-ムの、私が今の職に就いて働き始めた病院の、そう遠くない場所が我が家となりました。
Joyはバトミントンをはじめて、よく競技大会にも参加してました。
私はといえば、たまに旧友らとゴルフを回ったりしてたのがいつの間にか熱心に打ち込むようになってました。
ゴルフは気晴らしになるし、エエ運動にもなりましたなあ。
なんでそれまでしてこんかったんですやろ。
残念なんは球を打つと、どこに飛んでいくんか、全く予見できんっちゅうことですわ、、、もし上手いこと打てたら、いう話ですねんけどね!
数ヶ月でハンディキャップが18まで下がったのも、まあなるようになった、ちゅうことですかいなあ。
旧友がメンバ-になっとるWellington Golf Clubに入りました。
David Write,Warren Austad,Clive Stephenson,Peter Hunter,Bill Milesらと私とで2年に1回、North Islandのいろんなゴルフコ-スを巡りました。
我等の「探検旅行」は熱心に続けられてきました。
うちの3人の男の子らはシルバ-ストリ-ム小学校へ、JanはLower Huttの女学院へ通ってました。
そんな忙しい日々のさなか、私は芸術に目覚めましてん。
1961年、昼の休憩中、WellingtonでのDunbar Sloaneのオ-クションをひやかしとった時にSouth Islandの湖を描いた大きな油絵に目が止まりました。
で、フト90ポンドの値がついたときに挙手してしもた。
そういういきさつで、私はW.G.Bakerが1850年代に描いた絵の、栄えある持ち主となったんです。
私らはそれから初期ニュ-ジ-ランド絵画を熱心に集めるようになりました。
多くは測量技師たちがニュ-ジ-ランドの新しい土地を開拓していく最中で出会った壮大な風景を描きあげたもんです。
他には帆船を描いた物もあって、当時英国からの最初の移民を乗せてるやつですわ。
こういうもんは、鑑定家の興味を全く引かへんかったらしく、当時は二束三文で売りにでてましてん。
10年後、初期のニュ-ジ-ランド絵画人気が爆発して、一気に値段も急上昇ですわ。
1970年ごろのうちのオ-クションル-ムに飾ってある絵のうちで、中世の騎士が腕を交差させて胸に剣を抱き、自らの棺に横たわってるやつに私はぞっこんでしたんや。
木の厚板に油絵で描かれてあって一目で古くからのもんやと分かる。
裏に英語の古文体で題名が書かれてあって、「Tossarelliの死」とある。Cyprianiの作ですわ。
私はコレを25ドルで買いましたんやが、画家の名前で調べてみたら、すごく有名な人らしいことが分かってきましてん。
Joyは疑うてましたが、こりゃあ失われた名品ちゅうやつやないでしょうか。
オ-クションに出品したら、どれほどのもんやろ、いうのが知りとうて、ア-ト系のオ-クションで有名なLondonのサザビ-に手紙を書いてみましたんや。
返ってきた返事に大興奮、同じ画家の同じような絵が5億ポンドで売れた、言いよりますねん。
もっとも、キャンバスに描かれたもっと大きな作品やったいうことらしいんですけどね。
サザビ-のアドバイスによると、Cyprianiの「Tosarelli」には値がつけられん、いうんです。
こら、たいへんなお宝、ちゅうことなんですやろか?
Joyはそないなアホなことあらへんわ、なんて言うてましたけど、めげない私は150ドルの保険をかけて、特別便でさらに10ドル上乗せしてロンドンへ郵送しましたんや。
1971年9月、絵はロットナンバ-155でオ-クションにかかることになり、私らもMonte Carloへの旅とセットにして参加することにしましてん。
オ-クションはホンマ素晴らしかったんですよ。
Joyと私がサザビ-のオ-クションル-ムに入ると会場は興奮に包まれていて、ロットナンバ-155番は5分前におわったばっかりでした。
3人の入札があったと。
で、Tosarelliは25ポンドで落札されたいうやないですか。
あの胸くそ悪い木の切れっ端のために、エライ散財させられてしもたもんですわ。