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サイレントマニピュレーション:ハイドロリリース異聞、四方山なお噺(その5)
肩のサイレントマニピュレーションとは、先のハイドロリリースと命名した整形外科の先生が言い出されました。
新規な名前を付けてドンと花火を打ち出すのが得意な先生ですね。
マニピュレーションという技法は、昔からあり、カイロプラクティックなんかでも使われていた言葉です。
定義上は、「関節の徒手的他動伸張運動による治療行為」とされていて、なんか動きが悪いのをバキッといわせて動きやすくするぞと、そういうやつです。
関節が拘縮、固まってうごかなくなるってことですが、関節って袋につつまれてて、それを関節包ってよびます、それが周りの筋肉ともども固まって癒着してしまってガチガチに。
マッサージなんかでゆるんだりはがれたりしてくれたら、それでよいのですが、ほんっとに固まってしまうとそれもかなわない。
そういうときに、整形外科の分野では、麻酔がかかって痛みがなくなった状況をつくって、エイヤッとうごかすと、バキッ、ベリッと袋が破れて、ないし癒着してるのがはがれて、周りのコワバった筋肉も含めて動き出すと、そういう処置です。
整体の「うぎゃー」がない版をイメージしていただいて結構です。(結構ですか?)
病院勤務でいたころは、固まってガチガチになってしまった肩関節について、それと同じような処置を関節鏡視下でやっていました。
全身麻酔で患者さんには眠っていただいて、関節鏡設置。
肩関節の中を見ながら、関節の周りの袋をぐるっと一周、電気メスで切れ目を入れるとガツッと止まって挙がらなかった肩が、耳の横までスルッと挙がってしまう、、、のを確認して手術終了。
関節鏡って、大量の水で関節の中をパンパンにさせて、なおかつ手術中はずっと水を還流させながら(流しっぱなしにしながら)やってるんですよ、すると肩はパンパンに腫れてしまう。翌朝は2倍、は言い過ぎか、1.5倍くらいになっています。
腫れてるし、痛いし、というので肩を動かすどころじゃない。
腫れとムクミがひいてきたよ、というのが一週間ほどしてから、さあ、本格的に肩を動かすか、という頃には、もう肩が固まってきていて、あらら、手術前と変わらんやん、という状態になってしまっているのでした。
エコーの進歩で、肩肘を動かす、首からくる神経を、5番目と6番目の神経だけに麻酔をかける、ということが可能になりました。
これもハイドロリリースとも言えます。
麻酔薬というhydro(液体)で神経をリリースする、という手技。
これ、昔はホントにドキドキしながら、職人芸でやってました。
だって、首って、いっぱいごっつい血管がありますし、神経の束の下にはすぐ、肺の尖が隠れていますからね。
勢いあまって肺を刺してしまって、そこから空気が入り続けたりすると、肺がしぼんでしまうので、そうすると今度は、胸の横から管を刺し通して、中の空気を抜き続けるような処置をしないといけなくなる。ドキドキ。いやあ、それ、考えると科学の進歩ってすごいなあ。中が見られんやもんね。
首のところからエコーを見ながら麻酔薬を注射すると、15分ほどで全く手が挙げられらなくなる。
痛みもなくなるので、そこで私が患者さんの腕を持って、挙げて下ろして開いて回して、と動かすんですが、そのときに、そうですねえ、紙を引っ張るとピンと張っているのを、ちょっと捻りながら裂くようにすると、シュバッと破れますよね、そういう感覚です。
関節の袋が中で破れて、、、肩が挙がる。
そのときに音が鳴るんですが、独特のミシミシ、メリメリ、ぐいぐい、ゴキッという音、それが比較的、音が少なくできる、というのでサイレント、と、いうことらしいんですが、そうかなあ、言ったモンがちか、という印象を私は持っています。音は、あんまし変わらんけどなあ。
とにかく、サイレントマニピュレーション、というと、非観血的授動術、なんて正式名称で呼ぶより、スマートな感じはしますわな。
名付けの勝利でしょうかねえ。
イメージがまったく違ってきます。
破って挙がるようになって、それでおわり、めでたしめでたし、、、ではありません。
翌日からしっかり動かしてもらうことが大事。
あとの2週間くらいはホントにしっかりがんばってもらいたいんですよ。
これも、また、小さなコトからコツコツと。
なにごともお手軽、インスタントにハイ、終わり、なんていきませんわ。魔法やないですから。