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伊藤先生のMDT/マッケンジー法臨床実習体験記、一問一答⑥
⽇本ではなかなか遭遇しないケースもありました。
腹部⼤動脈瘤や循環器疾患があり、糖尿病 のコントロールが悪く合併症もあり、
胸椎・腰椎の狭窄症で座っていても⽴っていても、脂 汗が出るような,
腰部から両下肢の疼痛を訴える患者さんを担当しました。
おそらく⽇本の職場ではリハ処⽅は出ないでしょうし、
リハ指⽰があったとしても「MDT で評価を」という指⽰は出そうに無いケースです。
中の注;MDTで評価を、という依頼、指示は,私にとってはなんの違和感も感じないですし、日ごろのウチの診療でも、ごく普通に理学療法士にはそのように話したりしています。
でもマッケンジー法/MDTに親しみのない方にとっては、「なにそれ?」って思われるんじゃないでしょうか。
マッケンジー法/MDTは治療法というよりも、評価の方法なので、運動検査の反応によって病態を分類するのがまず第一。
この分類で、この反応だから、このエクセサイズを治療として続けましょう、とういう考え方で進んでいきます。
ですから、まずは評価ありき、理学療法士には「評価してください」、という依頼をすることになるんですね。
姿勢修正やわずかな伸展・屈曲の動きでも激痛があるので、
「GP(かかりつけ開業医)に戻しては」と Jenny 先⽣に相談した際に、
「この患者さんは、GP の予約まで3週間あるわ。
Hiroko がなんとかして痛みが緩和できる⽅法を⾒つけてあげなければ、
他に治療を受けるチャンスもなく⾃宅で放置されてしまうのよ。
ここは⽇本とは違うのよ」と⾔われました。
動きでアセスメントするのはほぼ不可能な状況だったため、
Jenny 先⽣と2⼈で MRI の読影報告書を確認したところ、
上部腰椎のわずかなスラウチとニュートラルポジションの範囲であれば安全そうだと判断しました。
疼痛緩和を⽬的として、
テーブルに肘を置いてわずかにうなずく姿勢とニュートラルポジションの範囲での反復運動で Better な反応が得られたので、GP の予約までの3週間を凌ぐ⽅法として伝えました。
Dundee での実習を通して、
UK の理学療法⼠の守備範囲を⽇本に例えると、
⼿術をしない整形外科医と、薬を処⽅しない⼼療内科医の役割を担うイメージを持ちました。
⼜、リハビリ予約の待機リストを考えると、
3、4回で分類し、分類に応じた“治療の設計図”を最短で 描くことも必要な場合があるため、
責任が伴う⽴ち位置だと感じました。
⽇本国内では、
⻑期にわたって定期的に患者様が来院できる環境があります。
ナラティブも⼤切にしつつ、丁寧に治療を進めることが出来るのは⽇本の特徴かもしれません。
その⼀⽅で、Dundee のようにスピード感が全く異なる環境での臨床実習では、
MDT が本来持っているポテンシャルを最⼤限に発揮させる体験をしたと思います。
⽇本の理学療法⼠の⽴ち位置とは違う環境で、
MDT が医療において果たす役割を知ること が出来たことは⼤変貴重な体験だったと思います。
<中のコメント>手術をしない整形外科医と、薬を処方しない心療内科医っていう話は、
わたしには非常に突き刺さりました。
これ、そのまま、わたしが今、取り組んで/取り組もうとしていることじゃあないですか。
わたしがマッケンジー法の講習会を受けていたときに魅力的に感じたのも、
セラピストと患者さんのやりとりが、まるで認知行動療法のようにすすんでいく様に感動したからでした。
(でもそのやり方は、多分にセラピストの「個性」であることも、後になって知るのではありますが。)
PT職のセラピストが注射できるっていう環境は日本にはないですが、
わたしが注射をして、その結果、こんな風に変化があったよ、という情報をPTと共有することで、
似たようなことは、今、当院でもできているんじゃないかなあ、って思いました。
PTから、ここに注射して反応を確認してもらえないか、と依頼があったりもしますしね。
今日はここまで、まだ、つづきます。
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書いた人:伊藤博子先生
編集した人:尼崎市のはずれ、川ひとつ越えるとそこは大阪市西淀川区、の中野整形外科運動器リハビリテーションクリニック 院長 中の