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伊藤先生のMDT/マッケンジー法臨床実習体験記、一問一答⑦
Q:Diploma program って、Derangement をバンバン⾒つけていく感じですか?
<中の注>derangementという分類だと判断できるということは、
短期間で状況が変化させることができる方法を見つけるということを意味するので、
MDT/マッケンジー法セラピストは、総じてdrangementを見つけようとします。
ちょっとした見方の違い(生じている現象をどう解釈するか)ということでもderangementの発見につながったり、つながらなかったりするので、
diplomaであれば、derangementという分類につながる道を、さぞ、上手く見つけることができるんでしょうね?
という趣旨の質問デス。
実習地はそれぞれの国で医療保険制度の違いがありますし、
コミュニティーにおける医療 施設の役割によっても来院される患者様の症状やニーズが違うかもしれません。
Dundee は、NHS の管轄にあり、Pain (疼痛)の検査機関のような印象を持ちました。
⽇本の整形外科のように、walk in(ふらりと⽴ち寄る)でも受診できる環境ではなく、⼤半が GP からの紹介です。
おそらく運動器の疼痛であろうと思われる患者様が集まる場所ではありますが、
内科的な 問題はないので理学療法⼠へ紹介したいというケースの他に、
「原因不明の疼痛を評価して ください」という紹介状を携えて来院される患者様もいましたので、GP から紹介された背景は様々でした。
この様な事情もあり、Derangement と分類されるケースは既出の報告と ⽐較すると少なかったと思います。
John 先⽣からは、
「どのような患者様を対象とした研究かによって、MDT 分類の⽐率は変動がある。
MDT 分類の中で Derangement が多いという先⼊観や、Derangement ありきで 介⼊すると、
些細な変化すら Better と思って Derangement と安易に分類しがちだ。
もっと 客観的にアセスメントしなさい」と指導されました。
また、John 先⽣によると
「Credential 講習会を受講したセラピストは、暫定分類を安易に Derangement と判定する傾向がある」と⾔っておられました。
私も、実習の最初の2週間 は指導者へのフィードバックで「Derangement と暫定分類しました」と伝えると、
「Oh, again! Mrs. Derangement” (またかい?ディレンジメントさん!)と笑われました。
確かに、Credential 認定講習会は、DP(中の注:directional prefarence:症状が改善される特定の運動方向、でしたね) の探索がフォーカスされた内容になりやすいかもしれません。
Derangement と暫定分類できれば他の分類を ruling out(除外)出来ますから、DP の探索は⼤変重要です。
しかし、些細な変化を追いかけ過ぎると、他の分類を⾒落としてしまう可能性もあります。
John 先⽣から、
「関節可動域がわずかに改善したからと⾔っても、
ご本⼈の主訴が改善してない段階で DP を断定したり、Derangement と決定するべきではない。
患者様が⾃信を持って取り組めるセルフケアを提供する⽴場なのだから、もっとよく調べなさい」と指導されました。
Jenny 先⽣も、John 先⽣からも、初回にとるベースラインが⼤変重要と⾔われました。
3つのベースライン:
症状の変化を確認(symptomatic baselines)、
ERP/PDM の有無や ROM の変化を確認(mechanical baselines)、
階段昇降や歩⾏、リーチ動作などの動作能⼒の変化を確認(functional baselines)
をとり、Traffic Light Guide に従って loading strategy を粛々と実施し、毎回リーズニングをすることが要求されると実感しました。
Rapid change(早い反応)を⽰す Derangement を⽀持する DP を⾒つけるにあたっては、初回のアセスメントの重要性を痛感しました。
Diploma program を通して、ベースラインとりの練習をしたと⾔っても過⾔ではないと思います。
機能や症状の変化だけでなく、
不安感や思い込みによる影響などの⼼理的側⾯の変化など、
患者様のナラティブな訴えもベースラインとして捉え、表現の変化も確認するようアドバ イスを受けました。
共有スペースに各種模型やステップ台、トレーニング⽤品が設置してあり、⾃由に利⽤できます。
<中の注>3つのベースライン、という話は、初めて聞きました。
最近の講習ではそんな話もあるのでしょうか、
少なくともわたしが受けていた中では、そんな話はでてきませんでした。
が、これ、臨床で実際に活用できるヒジョーに有用な考え方だな、と思います。
ついつい、全部ごちゃ混ぜにして、まあいいか、というようなザックリした判断に(わたしは)なりがちで、
ソレジャー、判断の甘さにつながると改めて気づかされました。
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書いた人:伊藤博子先生
編集した人:尼崎市のはずれ、川ひとつ越えるとそこは大阪市西淀川区、の中野整形外科運動器リハビリテーションクリニック 院長 中の