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伊藤先生のMDT/マッケンジー法臨床実習体験記、一問一答⑧
Q:⽇本は依存的な患者様が多いと思うのですが、Dundee ではどうでしたか?
⽇本の私の職場と⽐べると、
Dundee の患者さんは⾃主トレをしっかりやってくださる傾向があり、adherence が良い印象を持ちました。
私が担当した患者様のほとんどが、
次回のフォローアップまでエクササイズを指定した通りに実施してくださり、⼤変驚きました。
理学療法⼠の治療が受けられることに対して価値があるもの、貴重な機会だと認識しておられましたし、
「せっかく東京から来てくれているのだから頑張るよ」と⾔ってくださいました。
John 先⽣⽈く、
NHS では理学療法⼠に会うまでに時間がかかるので、
本当に困っている⼈たちがやっとたどり着くこともあり、
MDT のエクササイズも、治療として真剣に取り組んでくれる傾向があるとのことでした。
その⼀⽅で、
強い鎮痛薬(コデイン)を常⽤されている⽅や、運動器の問題以外の要因によって痛みの訴えが修飾されている⽅もおりました。
姿勢修正だけで叫び声をあげたり、問診中に泣き出す⽅もいました。
疾病利得のある⽅や、DVが関与している症状、パブで殴られた後の⾸の痛みなど様々な疼痛に対しても、MDT は⼤変実⽤的でした。
<中の注>疾病利得のある方、という表現にニヤリ。
彼の国、我が国も、ショセンが同じ人間よのう、と。
あっ、これ「注」ではなくてコメント、ですね。
冒頭のadherence が、ということについてもコメントしますと、
まあ、リハビリにもいろんなやり方がありますので、
「治療してもらうと、(帰るときに、)ぜんぜん違うわあ、楽になりました、先生、腕がイイのね」
というのも否定しませんし、そういう技術はすごいなあ、と思います。
でも、結局、そうやって「良くなった」患者さんは、
また同じ状態で戻ってくるのがフツーです。
そのループをよしとするか、それが問題だとするかで、治療する側の方法論も変わってきます。
それじゃあ、結局、治療してる意味、ないよね、と感じた治療家は、
「何かをしてあげることで、状態を変える」のではなく、
「状態を変える方法を教えてあげる(もしくは、患者さんと一緒に探して行く)」という方法に帰着してゆきます。
それは、よく、うちの齋藤潤が言ってる、
「魚の釣り方を教える」ということですね。
だから、自分で魚は釣ってもらわないと、運動は自分でやってもらわないと、
現状は変えることができません。
「アドヒアランス(adherence)が良い」、というのは、
「患者が積極的に治療方針の決定に参加し、その決定に従って治療を受ける」、ことですが、
伊藤先生のお話では、「治療を受ける=自主トレをしっかりやる」という文脈で使われていました。
その反対が「依存的な患者様」ということになります。
「積極的に治療方針の決定に参加する」という文化は、なかなか日本には根付いていないもので、
「センセーにお任せします」という方がまだまだ多いのが現状です。
そういう意味で「日本には依存的な患者(様)が多い」という冒頭の質問になっていると、(自主トレを)やる、やらない以外の意味も私は感じていますが、伊藤先生の真意はどうなのでしょう?
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書いた人:伊藤博子先生
編集した人:尼崎市のはずれ、川ひとつ越えるとそこは大阪市西淀川区、の中野整形外科運動器リハビリテーションクリニック 院長 中の