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マッケンジー先生自叙伝:Against the tide 42

マッケンジー師匠の世界漫遊記の続きです。

頸椎のエクセサイズのヒントをつかむ師匠。

同じ現象を見ていても、感じるものは人それぞれ、なんですねえ。

 

次の目的地はノルウェイのOsloにある、Freddy Kaltenborn先生の理学療法クリニックです。

Kaltenborn先生はゴツい手をしたはる大男でしたわ。

先生はmobilizationやmanipulationの手技をオステオパシ-の原則にのっとって高いレベルにまで完成させはったお方です。

そのほとんどは私らにはなじみの無いもので、ニュ-ジ-ランドの理学療法士にはあまり知られておらず、使いこなしている者もおらんかったんやないですかいな。

当時オステオパシ-の考え方では、ぎょうさんある背骨のなかで、たったひとつの椎間関節に直接圧迫力をかけることができるんや、なんてことが信じられとったんです。

また、セラピストが背骨の関節を触診することで、そういうふうな力をかけるピッタシのポイントを捜し当てることが出来るんや、なんやいうてはりますねん。

そないなたいそうな正確性をもって、局所のmanipulationができるもんやろかと私自身は疑うてましたし、実際のトコ、当時も今も、そないなことは出来るはずがないと私は思てるんです。

良質な論文を読んでると、「感覚」による診断やら「正確な触診」は信頼に足らず,腰痛の原因をつきとめるにはほとんど役に立たんとされてますわ。

ノルウェイでは、患者さんを治療するいう面で、こらエエなあと思うようなテクニックには出会えませなんだ。

とはいえ、manipulation手技の研修システムの組織体系には、非常に感銘をうけました。

理学療法士や総合内科医が数日、一緒に集まって研修を行い、それぞれのクリニックに帰って研鑽を続け、習うた技術をさらに研ぎ澄ます、いうんです。

数ヶ月してまた集まって、技術やら治療戦略やらの情報交換をして知識と経験を分かち合うんです。

新しい技術やらアイデアに触れるこういう機会をもつ、いうんは上手いやり方やと思てます。

manipulation手技への私の興味は失せてはいたんですが、NZMTAにとって先生が著書に示されとる手技は一考に値すると思て、Freddy先生の助力も得て英語に翻訳しました。

でもホンマのとこいうと、Kaltenborn先生のクリニックにはガッカリでしたんや。

ここでは椎間板に影響与えるようなエクセサイズは全く行われておらず、単に筋力を鍛える訓練を患者さんにさせてはるだけでしたんや。

加えてほとんどの患者さんにmanipulationをしてはりました。

私がやってる治療法で、多くの症例にすぐに何らかの反応がでるのは、背骨の関節やら椎間板やらに直接働きかけるようなことをしてるからやと思てますねん。

筋肉鍛えても関節の周りに効果が長続きするようなことが起こるワケはないですし、痛みにはほとんど、いや全く効果は示さんですやろしなあ。

Freddy先生は助手のひとり、Rolf Gustaveson先生を紹介してくれはりました。

Rolf先生のところを訪ねたとき、先生がこう言わはったのが印象的でした。

「頸部の問題に対する答えはココからココまでの間のどこかにあるんですやろなあ」、そう言いながら頭を上下に傾けることなく、首を出来るだけ前に突き出して、そしてまたいける分だけ全部首をうしろに引きはるように動かして見せてくれはったんでした。

頸部に問題のある患者さんらを診ていたときにこのアイデアを試していて、フト気づいたんですが、動かせる分だけ全部動かすようなやり方で反復して頸を動かさせていると、腰で起こったことと同じで、痛みの場所やら強さやらが変化していくことがあるんですわ。

首を前に突き出したままでいたり、前方への反復運動を繰り返させていると、患者さんの症状がだんだん出てきて、悪くなっていきよる。

背骨よりも後ろの位置で頸を保持させていると症状が減って、消えてしまうことがある。

これは新しい一歩を踏み出すための大発見やと思いましてん。

当のRolf先生は動きと痛みとの関係には興味あらへんかったようですけどなあ。

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